ペットボトルのふたをすぐに開けられないことはフレイルと関連する
Key Points
・フレイルとペットボトルふた開け質問票による評価を行った. ・「ペットボトルのふたをすぐに開けられない」と感じる人ほど,フレイルとの関連が強かった. ・「ペットボトルのふたをすぐに開けられないこと」は,フレイルの兆候をとらえる手がかりとなる可能性がある. |
研究の概要
研究の背景と目的
私達の以前の研究で,ペットボトルのふたを「開けられる人」と「開けられない人」とでは握力に明確な差があり,その境目は17.7kgであることがわかりました(Sawaya Y, et al. Geriatr Gerontol Int 2022;22:682-684).この17.7kgはフレイル(加齢に伴う心身の衰え)の評価項目の一つである握力の女性基準値18kgとほぼ同じで,日常生活で筋力の低下に気づく方法として有用であることが示されています.そこで今回の研究では,フレイルの状態を総合的に評価できる基本チェックリストという質問票を使い,健康長寿の鍵となる存在であるフレイルとペットボトルふた開け能力との関係を調査しました.
研究の方法
デザイン:横断研究,アンケート調査
対象:地域在住高齢者427名(平均年齢74.7歳,男性50.8%)
期間:2023年6~8月
主要な評価項目:
■フレイル:基本チェックリスト(以下KCL,25項目の質問)
■ペットボトルふた開け:ペットボトルふた開け質問票

※本研究では,1をすぐに開けられる群,2~4をすぐに開けられない群に分類した.
主要な結果:
■群間比較:すぐに開けられる群と開けられない群で,KCLの25質問項目を比較した.
25の質問の内,15の質問で,すぐに開けられない群の1点の割合が高かった.
■二項ロジスティック回帰分析
ペットボトルのふたをすぐに開けられないことは,2つのモデルでフレイルと有意に関連していた(p<0.001).
■Receiver Operating Characteristic分析
ペットボトルのふたをすぐに開けられないことは,フレイルに対する一定の判別能を有していた(感度50.0%,特異度81.0%,AUC 0.65,p<0.001).
結論と意義:
「ペットボトルのふたをすぐに開けられない」といった,日常生活の何気ない動作に注目することで,フレイルの兆候に早期に気づくきっかけとなる可能性があります.本研究は,誰もが身近に行う動作を通じて健康状態の変化を捉える,簡便かつ実用的な指標の可能性を示した点で,フレイル予防への貢献が期待されます.

論文情報
掲載誌:Physical Therapy Research
論文タイトル:Association between Frailty and the Self-reported Inability to Immediately Open a Polyethylene Terephthalate Bottle Cap in Older Japanese Adults
著者名:Yohei Sawaya, Tamaki Hirose, Masahiro Ishizaka, Naori Hashimoto, Akira Kubo, Tomohiko Urano
DOI:https://doi.org/10.1298/ptr.E10323
著者紹介
沢谷洋平
2009年 秋田大学医学部保健学科 理学療法学専攻卒業
2009年 市立室蘭総合病院リハビリテーション科
2013年 青年海外協力隊(職種:理学療法士)タンザニア連合共和国 ムナジモジャ病院
2015年 マロニエ苑通所リハビリテーション にしなすの総合在宅ケアセンター 2019年~ 国際医療福祉大学保健医療学部 理学療法学科
問い合わせ・取材申し込み先
国際医療福祉大学保健医療学部理学療法学科
沢谷洋平
E-mail: sawayaiuhw.ac.jp
電話: 0287-24-3018