Key Points
| ・介護予防事業への参加頻度別に,フレイルとロコモティブシンドローム(ロコモ)を評価した. ・男性では,低頻度群でフレイルの有症率が高く,ロコモの指標も不良であった. ・男性において,介護予防事業への参加がフレイル・ロコモ対策として重要であることが示された. |
研究の概要
研究の背景と目的
高齢者の健康課題である「フレイル」と社会参加の関係については多くの研究がありますが,同じく重要な「ロコモティブシンドローム(ロコモ)」については,社会参加との関係を調べた報告がほとんどありません.そこで本研究では,自治体が実施する介護予防事業への参加頻度と,フレイル・ロコモの状態との関係を,男女別に分析しました.
フレイル:年齢とともに,心身(体力や気力)が低下した状態
ロコモ:運動器(骨・関節・筋肉)の障害で,立つ歩くという移動機能の低下をきたした状態
研究の方法
デザイン:横断研究,アンケート調査
対象:一都市の介護予防事業に参加した地域在住高齢者486名(平均年齢80.4歳,女性 81.1%)
期間:2023年4月~2024年3月
主要な評価項目
■フレイル:後期高齢者の質問票
■ロコモ:ロコモ5
■介護予防事業への参加頻度
低頻度,中頻度,高頻度の3群に分けた
主要な結果
■群間比較
男性では,低頻度群においてフレイルの有症率が高かった.
男性では,低頻度群においてロコモ5の合計点数,休まずに歩き続ける,2kgの買い物を持
ち帰る,家のやや重い仕事の点数が高かった.
(ロコモ5の点数は,高いほどロコモの重症度を示す)
女性では,介護予防事業への参加頻度でフレイル・ロコモ指標に有意な差を認めなかった.
■二項ロジスティック回帰分析:
男性では,非フレイルであることと,介護予防事業への高頻度の参加が関連していた.
※オッズ比は図を参照.従属変数を非フレイルとし,年齢・居住地を調整した.

結論と意義
男性高齢者において,介護予防事業への参加頻度が高いほど,フレイルおよびロコモの指標が良好であることが示唆されました.介護予防事業参加による心身機能への関連が,社会的な繋がりを保ちやすい女性よりも男性に顕著に現われた可能性があると考えられます.男性の参加しやすい事業や社会参加を促進する取り組みなど,今後の社会実装が期待されます.
論文情報
| 掲載誌:Annals of Geriatric Medicine and Research 論文タイトル:Association between Frailty, Locomotive Syndrome, and Participation Frequency in a Long-Term Care Prevention Program among Community-Dwelling Japanese Older Adults: A Sex-Specific Analysis 著者名:Tamaki Hirose, Yohei Sawaya, Masahiro Ishizaka, Naori Hashimoto, Tomohiko Urano DOI:https://doi.org/10.4235/agmr.25.0047 |
著者紹介
| 広瀬環 2013年 国際医療福祉大学 保健医療学部 理学療法学科卒業 2013年 国際医療福祉大学塩谷病院 リハビリテーション室 2018年~ マロニエ苑通所リハビリテーション にしなすの総合在宅ケアセンター 2020年~ 国際医療福祉大学保健医療学部 理学療法学科 |
関連ページ
| リサーチマップ https://researchmap.jp/htamaki |
問い合わせ・取材申し込み先
| 国際医療福祉大学保健医療学部理学療法学科 広瀬環 E-mail: n-tamaki 電話: 0287-24-3018 |
