2025/4/3公開 著者:井上達朗
オステオサルコペニアの概要
骨粗鬆症とサルコペニア(筋減弱症)はともに,中年期から高齢期にかけて生じやすい代表的な老年症候群である.両者とも転倒や骨折,入院や死亡の危険因子であることが報告されており,予防と介入が重要視されている.オステオサルコペニアは,骨粗鬆症とサルコペニアを併存した比較的新しい概念である(図).オステオサルコペニアは,骨粗鬆症とサルコペニアそれぞれ単独と比較して,転倒や骨折のリスクを増大させる可能性が考えられている.
図 オステオサルコペニアとは

オステオサルコペニアの有病率
オステオサルコペニアの有病率は,性別や疾患の有無により異なる.地域在住高齢者の有病率は,男性で最大11%,女性で64.3%と報告されている1).女性は閉経に伴う骨粗鬆症の影響が大きく,必然的に有病率が高くなる傾向にある.また,骨粗鬆症で発症しやすい大腿骨近位部骨折患者の女性のオステオサルコペニアの有病率は65.7%とされており,中高齢期の骨折予防に対するオステオサルコペニアの診断と介入は重要と言える.
2024年に実施された66研究,64,404人を包含したメタアナリシス2)によると,地域在住高齢者や入院患者を含むオステオサルコペニアの全体の有病率は18.5%であり,男性15.3%,女性19.4%とやや女性の方が高い傾向がある。サブグループ解析の結果では,病院での有病率は24.7%,地域では12.9%と報告されている.また,地域別の有病率は,オセアニアで22.9%,アジアで21.6%,南米で20.8%,北米で15.7%,ヨーロッパで10.9%と報告されており,地域での違いが報告されている.オステオサルコペニアのリスク因子は,フレイル(OR = 4.72, 95% CI: 2.71–8.23, I2 = 61.1%),低栄養 (OR = 2.35, 95% CI: 1.62–3.40, I2 = 50.0%),女性(OR = 5.07, 95% CI: 2.96–8.69, I2 = 73.0%),年齢(OR = 1.10, 95% CI: 1.06–1.15, I2=86.0%)であった.
オステオサルコペニアとアウトカム
先述のメタアナリシスの結果では,オステオサルコペニアは転倒 (HR = 1.54, 95% CI: 1.20–1.97; I2 = 1.0%, 3研究),骨折(HR = 2.13, 95% CI: 1.61–2.81; I2 = 67.8%, 7研究),死亡(HR = 1.75, 95% CI: 1.34–2.28; I2 = 0.0%, 5研究)のリスク因子であることが報告されている.
参考文献
- Inoue T, Maeda K, Nagano A, Shimizu A, Ueshima J, Murotani K, Sato K, Hotta K, Morishita S, Tsubaki A. Related Factors and Clinical Outcomes of Osteosarcopenia: A Narrative Review. Nutrients. 2021 Jan 20;13(2):291. doi: 10.3390/nu13020291. PMID: 33498519; PMCID: PMC7909576.
- Chen S, Xu X, Gong H, Chen R, Guan L, Yan X, Zhou L, Yang Y, Wang J, Zhou J, Zou C, Huang P. Global epidemiological features and impact of osteosarcopenia: A comprehensive meta-analysis and systematic review. J Cachexia Sarcopenia Muscle. 2024 Feb;15(1):8-20. doi: 10.1002/jcsm.13392. Epub 2023 Dec 12. PMID: 38086772; PMCID: PMC10834350.