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「ペットボトルのふたが開けられない」はロコモ・フレイル・サルコペニア共通のサインかも?

2025.6.10

Key Points

・ペットボトルのふた開け動作とロコモティブシンドローム(ロコモ)・フレイル・サルコペニアを評価した.
・ふたが開けられない人は,開けられる人と比べて,ロコモ度2・3のリスクが2.72倍,フレイルのリスクが3.38倍,サルコペニアのリスクが3.61倍高かった.
・ふたが開けられない人の93.9%が,プレフレイルかフレイルに該当した.
・ふたが開けられないことが,ロコモ度2・3,フレイル,サルコペニア共通の身近なチェック方法となる可能性が示された.

研究の概要

研究の背景と目的

私達のこれまでの研究で,ペットボトルのふたが開けられる人と開けられない人の境目となる握力が17.7kgであること(Sawaya Y, et al. Geriatr Gerontol Int 2022),アンケート調査によるふたをすぐに開けられないこととフレイルの関係(Sawaya Y, et al. Phys Ther Res 2025)が明らかになっています.本研究では,健康長寿のカギを握るとされるロコモティブシンドローム(ロコモ),フレイル,サルコペニアの3つの指標に同時に着目し,ペットボトルのふたが開けられないこととの関係を調査しました.

ロコモ:運動器(骨・関節・筋肉)の障害で,立つ歩くという移動機能の低下をきたした状態
フレイル:年齢とともに,心身(体力や気力)が低下した状態
サルコペニア:加齢に伴う,筋力や筋肉量の減少(筋肉に特化した症状)

研究の方法

デザイン:横断研究,対面での実測調査
対象:介護予防事業に参加した地域在住高齢者341名(平均年齢80.0歳,女性 82.4%)
期間:2022年7月~2024年2月
主要な評価項目:

 ■ロコモティブシンドローム:立ち上がりテスト,2ステップテスト,ロコモ25
 ■フレイル:J-CHS基準
 ■サルコペニア:握力,歩行速度,骨格筋量
 ■ペットボトルふた開け:
  未開封の525mlのペットボトルのふた開けを実施.
  成功群と失敗群に分類した.

主要な結果

 ■群間比較
  成功群は77.7%,失敗群は22.3%であった.
  失敗群はロコモ・フレイル・サルコペニア全ての評価指標で,成功群と比較して低いパフォーマンスを示した.

 ■二項ロジスティック回帰分析:

 「ペットボトルのふたが開けられない」は,ロコモ度2・3,フレイル,サルコペニアと有意に関係していた.
 ※オッズ比は図を参照.年齢・性別・BMIを調整した.

 ■Receiver Operating Characteristic分析
 「ペットボトルのふたが開けられない」は,ロコモ度2・3,フレイル,サルコペニアに対する一定の判別能を有していた.

※この結果は,先行研究のサルコペニアに対する下腿周囲長・SARC-F・SARC-CalFの判別能と比較して,同等かそれ以上に成績が良かった.

結論と意義

「ペットボトルのふたが開けられない」は,誰でも,どこでも,簡単にできるロコモ・フレイル・サルコペニア共通のチェック方法となる可能性があります.地域の皆様が日常生活で自身や家族の心身の衰えに気づくことや,医療現場の医療面接での応用など,今後の社会実装が期待されます.

論文情報

掲載誌:Geriatrics & Gerontology International
論文タイトル:Whether a polyethylene terephthalate bottle cap can be opened could serve as a common indicator for locomotive syndrome, frailty and sarcopenia
著者名:Yohei Sawaya, Tamaki Hirose, Masahiro Ishizaka, Naori Hashimoto, Akira Kubo, Tomohiko Urano DOI:https://doi.org/10.1111/ggi.70076

著者紹介

沢谷洋平

2009年  秋田大学医学部保健学科 理学療法学専攻卒業
2009年  市立室蘭総合病院リハビリテーション科
2013年  青年海外協力隊(職種:理学療法士)タンザニア連合共和国 ムナジモジャ病院
2015年  マロニエ苑通所リハビリテーション にしなすの総合在宅ケアセンター
2019年~ 国際医療福祉大学保健医療学部 理学療法学科

問い合わせ・取材申し込み先

国際医療福祉大学保健医療学部理学療法学科
沢谷洋平
E-mail: sawayaihwg.jp 電話: 0287-24-3018

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