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プレスリリース

低栄養患者のリハビリテーションにおける「運動負荷量の調整」と参照栄養指標に関するWebアンケート調査

2026.2.24

Key Points

・理学療法士、作業療法士が低栄養患者のリハビリテーションにおいて、運動負荷量の調整の必要性を認識していたが満足に実施できておらず、情報不足を感じていた。
・経験年数が長いほど、運動負荷量の調整への意識や満足度、情報の充足率が高かった。
・参照している栄養指標は体重(BMI)、食事摂取量、アルブミン値の順であった。

研究の概要

研究の背景と目的

リハビリテーションの対象となる患者の多くは栄養障害を有しており、特に回復期リハビリテーション病棟では低栄養リスクを含めると約9割に達すると報告されています 。栄養状態を考慮しない運動は身体機能に不利益をもたらす可能性がある一方で、適切な栄養療法とリハビリテーションの併用は機能改善に有効とされています。しかし、臨床現場における運動負荷量設定のエビデンスや、理学療法士・作業療法士が何を根拠に調整を行っているかの実態は不明でした 。本研究は、この臨床現場の現状を明らかにすることを目的としました。

研究の方法

研究デザイン:アンケート調査を用いた横断研究
対象者:単施設(ケアミックス型病院)に勤務する理学療法士・作業療法士(74名)
調査内容:栄養状態の把握、運動負荷量の調整への必要性の認識、意識、満足度、情報の充足度、参照している栄養指標
統計解析:記述統計および経験年数別(若手、中堅、熟練)の傾向を分析

主要な結果

理学療法士・作業療法士がリハビリテーションを行う際に約9割が患者の栄養状態を把握していた。
約9割が運動負荷量の調整への必要性を認識しており意識していると回答した。
約8割が運動負荷量の調整を満足にできておらず、約7割が情報がないと回答した。
経験年数別では、必要性に関しては経験年数による回答の傾向に明確な差はみられず、満足度や情報の充足度は経験年数が長いほど割合が高い傾向であった。
参照している栄養指標としては、体重(BMI)、食事摂取量、アルブミン値、体重減少率、褥瘡の有無の順で多く、GLIM基準で推奨されている指標である下腿周囲長、CRP値は約3割であった。

結論と今後の展望

理学療法士・作業療法士は運動負荷量の調整への必要性を認識しているものの、エビデンスや指針の不足から臨床実践に苦慮している現状が明らかになりました 。栄養指標に関しては、従来用いられていたアルブミン値を参照している理学療法士・作業療法士が多い結果であり、今後は、客観的な調整指標の確立とともに、GLIM基準に基づいた最新の栄養評価指標の活用に関する教育体制の整備が必要であると考えています。

論文情報

掲載誌:日本栄養・嚥下理学療法学会雑誌
論文タイトル:低栄養患者のリハビリテーションにおける「運動負荷量の調整」と参照栄養指標に関するWebアンケート調査:単施設における検討
著者名:栁田光、上谷佑稀、瀧本知未、柳田賴英、井上達朗
DOI:https://doi.org/10.69308/jjnspt.2025-10

著者紹介

栁田 光
2023年3月 埼玉医科大学 保健医療学部 理学療法学科 卒業
2023年4月 慈誠会・練馬高野台病院 リハビリテーション部 入職
2026年4月 新潟医療福祉大学院 医療福祉学研究科 理学療法学分野 入学予定

関連ページ

・新潟医療福祉大学 リハビリテーション学部 理学療法学科 准教授 井上達朗  リサーチマップ リンク:https://researchmap.jp/tatsuro-inoue
・新潟医療福祉大学大学院:https://www.nuhw.ac.jp/grad/    

問い合わせ・取材申し込み先

栁田光
慈誠会・練馬高野台病院 リハビリテーション部
E-mail: hikaru.pt27gmail.com  

井上達朗
新潟医療福祉大学 医療福祉学研究科 理学療法学分野
E-mail: tatsuro-inouenuhw.ac.jp 

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