老年栄養ドットコム

在宅で作りたい!食べたい!嚥下食

2025.10.22

著者:髙橋瑞保(合同会社訪問栄養ステーションえん)

「嚥下食」のイメージを皆さんはどうお持ちでしょうか?やわらかい、飲み込みやすい、などの形態を想像されると思いますが、それは家では作れない、あるいは大変そうで無理だと思っている人は少なくないでしょう。ここでは、そんな不安を払拭できる実践方法についてご紹介したいと思います。

脳卒中で入院した人の自宅退院と嚥下機能の関連

回復期リハビリテーション病棟における自宅退院の関連因子を調査したところ、脳卒中では嚥下機能が関連していた1)、という報告があります。嚥下障害の原因は脳卒中以外にもあり、本サイトの別ページ2)を参照していただきたいのですが、いずれにしても「嚥下障害があっても自宅で過ごす」ためには嚥下機能に見合った食事を自宅でも提供できることが重要な鍵となります。

「嚥下食」の分類

 日本摂食嚥下リハビリテーション学会では、「日本摂食嚥下リハビリテーション学会嚥下調整食2021」(通称「学会分類2021」)という分類を設定しており3)、摂食嚥下に関する多職種が嚥下食の分類として使用しています。(表1、図1)

 一方で、「介護食」として広く一般に知られているのは「ユニバーサルデザインフード」ではないでしょか。「ユニバーサルデザインフード」とは、日常の食事から介護食まで幅広くお使いいただける、食べやすさに配慮した食品であると日本介護食品協議会が制定しています4)。ここでは「学会分類2021」を用いて以下解説いたします。

嚥下食作りは道具選びが重要

 料理を作る時には目的に合った道具を使うものですが、嚥下食の場合は先述したように「やわらかさ」が鍵になります。更に、「なめらかさ」も飲み込みやすさに影響しますので、物性を調整するための道具を使いこなせると、在宅で作れる嚥下食の種類が広がります。(図2)

 これらの調理器具は、食材を一から揃えて嚥下食を作る場合だけではなく、市販品を嚥下機能や咀嚼機能に合わせて調整する場合にも使用します。便利な調理器具を使いこなして、手軽に嚥下食が作れることを解説した書籍5)もあります。

「家族と一緒に同じものを食べたい」を叶える

 嚥下障害があっても自宅で過ごしたい、と言う願いには、家族と一緒に食卓を囲んで同じものを食べたい、という願いも込められていると思います。特殊な器具や材料を使わずに、自宅にあるものでなるべく簡単に嚥下食を作るために、基本的な手順と食材について紹介いたします。(図3、図4)

 また、筆者は在宅訪問栄養指導を中心に活動しているため、実際に作ったレシピの一部もご紹介いたします。

以上のように、在宅でも嚥下食を手軽に作ることは可能ですが、嚥下機能に見合った食物形態の選択には、専門職との相談が必要になることもあります。特に、調理については管理栄養士が直接自宅で調理指導ができる「訪問栄養指導」の制度を利用していただくことをお勧めします。

参考文献

1) 砂原貴子,吉村芳弘,備瀬隆広,嶋津さゆり.嚥下機能と栄養状態は回復期リハビリテーション後の自宅退院に影響を与える.学会誌JSPEN 2:262-269,2020.

2) 前田圭介.“サルコペニアの摂食嚥下障害と神経性摂食嚥下障害の違い”.老年栄養ドットコム.2025-4-2.https://geriatrics.jp/feed-swallowing/%e3%82%b5%e3%83%ab%e3%82%b3%e3%83%9a%e3%83%8b%e3%82%a2%e3%81%ae%e6%91%82%e9%a3%9f%e5%9a%a5%e4%b8%8b%e9%9a%9c%e5%ae%b3%e3%81%a8%e7%a5%9e%e7%b5%8c%e6%80%a7%e6%91%82%e9%a3%9f%e5%9a%a5%e4%b8%8b%e9%9a%9c/,(アクセス日2025-10-21)

3) 日摂食嚥下リハ会誌,25(2):135-149,2021 

4) 日本介護食品協議会. “ユニバーサルデザインフードとは”. https://www.udf.jp/outline/udf.html,(アクセス日2025-10-21)

5) 小山珠美,髙橋瑞保.おいしく食べ続けたい!―KTBCとお手軽介護食―.NPO法人口から食べる幸せを守る会.52-69,2024


本記事は仲谷鈴代記念栄養改善活動振興基金の支援を受けています

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