老年栄養ドットコム

地域在住の高齢者の超音波で測定した大腿前面筋厚をBMIで補正した指標は転倒と関連する

2025.12.9

公開日: 2025/12/9

Key Points

・超音波で測定した大腿前面筋厚は体重やBMIと有意に相関した。
・大腿前面筋厚をBMIで補正した指標は転倒と有意な関連を示した。
・身長や体重の補正では転倒と有意な関連を示さなかった。

研究の概要

佐渡トキめき会

新潟医療福祉大学、慶應義塾大学、北里大学、新潟南病院、佐渡総合病院が共同で主催している、地域在住中高齢者のフレイルの予防、早期発見を目的とした取り組みです。年に数回開催されており、認知機能、身体機能を測定しています。

研究の背景と目的

サルコペニアの診断基準には筋肉量の測定が必須となっています。近年、超音波画像装置が筋肉量を簡便に測定できるツールとして注目されています。しかし、筋厚は体格に依存してしまうため標準化する必要があります。しかしどの指標で標準化することが良いかはわかっていません。本研究の目的は、地域在住高齢者の大腿前面筋厚を身長、体重、BMIで補正し転倒との関連を明らかにすることとしました。

研究の方法

研究デザイン
横断研究

対象者

新潟県佐渡市で定期的に行われている佐渡トキめき会に参加した65歳以上の地域在住高齢者(310名)

筋肉量の測定

超音波画像装置を使用し大腿直筋、中間広筋の筋厚を測定

転倒の評価

基本チェックリストの「過去1年間に転倒しましたか」という質問に回答

統計解析

大腿前面筋厚を身長の二乗、体重、BMIで補正
転倒に対するカットオフ値をROC曲線で算出
転倒と各補正指標の関連をロジスティック回帰分析で解析

主要な結果

参加者310名のうち15.5%が「過去1年間に転倒した」と回答した。
大腿前面筋厚は体重、BMIと有意な相関を示した。
大腿前面筋厚をBMIで補正した指標のみが、交絡因子を調整した後も転倒と有意な関連を示した(オッズ比:2.27)。

結論と今後の展望

大腿前面筋厚をBMIで補正する有用性を示唆した。しかし、横断研究のため今後は縦断的な研究をし、因果関係を明らかにする必要がある。

論文情報

掲載誌:Clinical Nutrition ESPEN
論文タイトル:Anterior thigh muscle thickness normalized by body mass index is associated with falls in community-dwelling adults
著者名: Koki Nishino, Tatsuro Inoue, Sota Kobayashi, Kazuki Hotta, Tohru Izumi, Kentaro Kamiya, Akari Kasai, Mei Furusawa, Yui Funayama, Atsuhiro Tsubaki, Anna Kubota, Takanori Fujita, Hiroaki Miyata
DOI:10.1016/j.clnesp.2025.10.019

著者紹介

西野光貴
2025年3月 新潟医療福祉大学 リハビリテーション学部 理学療法学科 卒業
2025年4月 新潟医療福祉大学大学院 医療福祉学研究科 理学療法学分野 入学
2025年4月 小田原市立病院 リハビリテーション室 入職

関連ページ

・新潟医療福祉大学 リハビリテーション学部 理学療法学科 准教授 井上達朗 リサーチマップ リンク:https://researchmap.jp/tatsuro-inoue
・新潟医療福祉大学大学院:https://www.nuhw.ac.jp/grad/
・佐渡トキめき会 :https://kazuki-hotta.wixsite.com/sadotokimeki  

問い合わせ・取材申し込み先

小田原市立病院 リハビリテーション室
西野光貴
E-mail: hpm25007nuhw.ac.jp  

新潟医療福祉大学 医療福祉学研究科 理学療法学分野
井上達朗
E-mail: tatsuro-inouenuhw.ac.jp  

関連記事

時間栄養学の視点でみた中年期からはじめるフレイル予防

2025.12.9

災害時における高齢者の栄養問題

2025.12.8

低栄養―障害サイクル

2025.12.8